謝土の心で 命をいただく
白山の麓で
霊峰・白山に連なる山々に囲まれた勝山市平泉寺町に、ラブリー牧場という小さな牧場があります。標高400メートルの高原で、清らかな奥越の水と空気に恵まれた大自然の中で、40頭ほどのジャージー牛がのびのびと育っています。
心に
刺さった言葉
長い間、この牧場の牧畜や食肉に携わりってきた私とラブリー牧場の牧場主、松本忠司さんには、心に刺さったトゲのような思いがありました。というのは、欧州産ジャージー牛は、豊富な乳脂肪分を含んだミルクが採れる乳牛で、雌牛が生まれると大変重宝がられるのですが、一方で生まれてくるのは雌だけではありません。牧場でも年間7~8頭ほどの牡牛が誕生するのですが、それが生まれて数ヶ月で短い一生を終えていたのです。
生れた 大切な命
「肉牛としての肥育効率生産性は低い」…人間が決めた経済の物差しで計って、処分されてしまう若牛の命…。なんとか美味しくいただく方法はないのだろうか。
そこから私と松本さんは、ジャージー牛を肉牛として育てるという試行錯誤を始めたのです。完全無農薬の牧草にこだわり日中は牛舎でなく奥越前の高原に放牧し、生まれた地でのんびりストレスを与えない育て方をする、など私たちの手探りは10年以上に及びます。
ラブリー牧場のように数少ないジャージー牛を牧場で自由に放牧して育てているところは、日本国内でもほとんどありません。
今はようやく食肉として食卓にのせるとこまで来た、と自負しています。
自然に
感謝を
込めて
「謝土」
この話に限らず、人間の物差しで世の中を動かしているために、自然や生まれてくる命に、どんなに大きな代償を払わせていることか。荒れていく山々、災害を引き起こしやすい河川、増える耕作放棄地や田畑を荒らす野生動物…
これらは、実はみんな人間の営みが引き起こしている…私は野山を回りながら、冬場に狩猟をしながら、そう思うのです。
サスティナブルもけっこう、SDGsもけっこう、脱炭素もけっこう…打つ手があったら何でもやるべきだ。土の文字に感謝の謝を付けて…「謝土(シャトー)」。これは昭和の時代にワイン好きの…私が考えた造語です。
土(大地)に深い感謝と尊敬の心を持って、命をいただく。そんな思いで私なりにできる生業を続けていきたいと思っています。
代表 谷川 武夫
喜びと励ましの声
牧場から ひとこと
健康な牛から生産される牛肉こそが、人の健康も増進してくれる。
ラブリー牧場では大切な牛たちが健やかに暮らせる環境つくりを第一に、
夏山冬里方式といった、草木が芽吹き繁る春から秋の半ばまで奥越前の広い高原に牛たちを放牧し、秋冬は里の牛舎に下ろす飼育法で牛たちは自由に動きたい時に運動し、おなかが空いたらおいしい牧草をお腹いっぱい食べ、休みたかったら休み、眠くなったら眠るという自然のサイクルに沿ってのびのびと育ちます。
奥越前の遅く訪れる春ともなれば牛舎の中から芽吹きはじめた草木の香りの風を感じ今か今かと恋しがり、放牧初日の4月下旬には牛舎から解き放たれた牛たちは広い高原の牧草地目指し一目散に駆け、はしゃぎまわり嬉しそうに戯れる風景を目にすることが出来ます。
家畜の宿命として、最後には牛肉になってもらうわけですが、その命を無駄にすることなく、「ありがたくいただく」ことが人と牛が共存して生きてゆく道だと考えています。
令和5年2月8日
ラブリー牧場 松本忠司
会員募集
只今、謝土の会では会員を募集しています。お気軽にお問い合わせください。>詳しくはコチラ